中学理科中学3年生化学
中和の計算とグラフ|イオンの数の変化と体積の求め方【中3理科】
中3理科「中和の量的関係」を図解。H⁺とOH⁻が1対1で結びつくことを使い、ちょうど中和する体積を比で求める計算、塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えたときのH⁺・Cl⁻・Na⁺・OH⁻の4本のグラフ、BTB液の色の変わり方、発熱、できる塩の性質まで、例題つきでやさしく解説します。
「ちょうど中和する」とは の数と の数が等しくなることで、 対 で結びついて水になります。濃さが同じなら 体積の比 = イオンの数の比なので比例で求まります。イオン数のグラフは 本あり、 は減って 、 はずっと一定、 は増え続ける直線、 は中和点のあとから増えるという形で見分けます。
◎このページのゴール
ちょうど中和する体積を比の計算で求められ、H⁺・Cl⁻・Na⁺・OH⁻の4種類のイオンの数の変化グラフを選び分けられるようになる。
「何cm³加えればちょうど中和するの?」「グラフが4本あって、どれがどのイオンかわからない」——中3化学の入試問題で、いちばん点差がつくのがここです。 じつはこの単元は、暗記ではなく算数の比で解けます。 中和という反応そのものの意味やpHは酸・アルカリと中和とはにまとめてあるので、そこは終わっている前提で、このページは量とグラフだけに集中します。
どこでつまずいた?
あてはまるものをタップ。そこから読むと近道です。
ちょうど中和する体積は「比」で求まる(まず結論)
→やり方
- ちょうど中和する = の数 と の数 が等しい(1個ずつペアで水になるから)。
- 濃さが変わらないなら、体積が2倍ならイオンの数も2倍。つまり 体積の比 = イオンの数の比。
- あとは比例の計算。「酸の体積 : アルカリの体積」は、その組み合わせではいつも同じ。
ただし、この計算がなりたつのは水溶液の濃さが変わらないときだけです。 問題文に「同じ濃さの」「うすい塩酸を」と書かれているのは、そのための合図。 濃さがちがう液どうしは体積だけで比べられません(濃さの表し方は質量パーセント濃度で復習できます)。
なぜ1対1なの?——粒で見る
と は、必ず1個と1個が組んで水1個になります。
だから、片方が多ければ多いほうが余ります。 下の図の下段のように、 が3個で が2個なら、水は2個しかできず が1個余ります。
例題:体積を比例で求める
うすい塩酸 10 cm³ をちょうど中和するのに、ある水酸化ナトリウム水溶液が 8 cm³ 必要でした。 同じ塩酸 15 cm³ をちょうど中和するには、同じ水酸化ナトリウム水溶液が何 cm³ 必要ですか。
濃さは変えていないので、塩酸が1.5倍になれば、必要な水酸化ナトリウム水溶液も1.5倍です。
比の式で書くと なので、
答えは 12 cm³ です。 を約分して にしてから としても同じです。 この解き方は理科ではなく、小6算数の比そのもの。 比があやしいと感じたら、遠回りに見えても算数に戻るのがいちばん速い道です。
理科の計算なのに、比でいいの? なんだか手をぬいてる気がしちゃう。
手ぬきどころか、それが正解の道すじだよ。 濃さが同じなら「体積を2倍にすれば入っているイオンも2倍」。 だから体積とイオンの数は比例していて、グラフにすると原点を通る直線になるんだ。 中和のグラフが直線と折れ線でできているのも、これが理由。 中2数学の一次関数で習った「傾き」と「折れ曲がり」を、そのまま理科で使っていることになるよ。
✓理解チェック1
4種類のイオンの数はどう変わる?(入試最頻出)
うすい塩酸に、水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加えていきます。 このとき水溶液の中にいるイオンは、・・・ の4種類。 4本のグラフは全部形がちがうので、1本ずつ理由といっしょに覚えます。
表にすると、見分けの手がかりがはっきりします。
| イオン | 中和点まで | 中和点のあと | 理由 |
|---|---|---|---|
| 減っていく | 0のまま | と結びついて水になり、使い切られる | |
| 一定 | 一定 | 反応に関わらない。加える液にもふくまれない | |
| 増える | 同じ割合で増える | 加える液といっしょに入ってくるだけ | |
| 0 | 増えていく | 相手の がいる間は水になってしまう |
見分けのコツは2つだけです。
- 折れ曲がるのは と (反応する2人組だから、中和点で形が変わる)
- 折れ曲がらないのは と (反応しないから、中和点でも何も起きない)
?なぜ Cl⁻ の数は変わらないの?
は中和の反応に参加していないからです。 結びつくのは と だけで、 は液の中にそのまま残ります。 しかも加えているのは水酸化ナトリウム水溶液なので、 が新しく入ってくることもありません。
模範解答:「塩化物イオンは中和の反応に関係せず、加える水溶液にもふくまれていないため、数が変化しないから。」
と 、どっちも反応しないのに、なんで形がちがうの?
「どこにいた子か」で分けると一発だよ。 ははじめからビーカーにいた子だから、増えも減りもしないで一定。 はあとから注いでいる液に乗ってやってくる子だから、注いだぶんだけ増えていく。 「もともといた/連れてこられた」で覚えると、テスト中に迷わなくなるよ。
✓理解チェック2
液性とBTB液の色は、体積で決まる
中和点をはさんで、水溶液の性質は3段階で切りかわります。
上の図は「うすい塩酸を、水酸化ナトリウム水溶液 8 cm³ でちょうど中和できる」場合です。
| 加えた体積 | 液の中に残るイオン | 液性 | BTB液 |
|---|---|---|---|
| 8 cm³ より少ない | がまだ残る | 酸性 | 黄色 |
| ちょうど 8 cm³ | どちらも残らない | 中性 | 緑色 |
| 8 cm³ より多い | が余り出す | アルカリ性 | 青色 |
「BTB液が緑になった体積」=「中和点の体積」です。 だから実験の問題文に「緑色になった」と書いてあれば、そこがちょうど中和した点だと読み取れます。 指示薬の色と液性の対応そのものを確かめたいときは酸・アルカリと中和とはの指示薬一覧表を、もっと基礎から戻るなら小6の水溶液の性質を見てください。
中和は発熱反応——温度は中和点で最高
と が結びついて水になるとき、熱が出ます。 だから中和が進むほど温度は上がり、中和点でいちばん高くなります。 中和点を過ぎると、もう反応は起こらず、冷たい水溶液を注ぎ足すだけなので温度は下がっていきます。
このグラフも入試で問われます。 「温度がいちばん高くなった点」を読み取れば、それが中和点の体積です。
できる塩は2タイプ——とけるか、沈殿するか
中和でできる塩には、水にとけるものととけないものがあります。 このちがいが、そのまま実験結果のちがいになります。
| 組み合わせ | できる塩 | 水へのとけ方 | 液の見た目 | 中和点での電流 |
|---|---|---|---|---|
| 塩酸 + 水酸化ナトリウム | 塩化ナトリウム | とける | 透明のまま | と が残るので流れる |
| 硫酸 + 水酸化バリウム | 硫酸バリウム | とけない | 白くにごる(沈殿) | イオンが減るのでほとんど流れない |
塩化ナトリウムのほうは、液を蒸発させると白い結晶が出てきます(溶解度と再結晶の考え方です)。 硫酸バリウムのほうは、蒸発させなくてもその場で白い沈殿になります。
?なぜ硫酸と水酸化バリウムでは電流が流れなくなるの?
と は水になり、 と はとけない硫酸バリウムの沈殿になって液から出ていきます。 つまり、ちょうど中和した点では水溶液の中を動けるイオンがほとんどいなくなるのです。 電流を運ぶのはイオンなので(→イオンとは)、運び手が消えれば電流も流れません。
模範解答:「中和によって水と、水にとけない硫酸バリウムができ、水溶液中のイオンがほとんどなくなるから。」
✓理解チェック3
よくある間違い
✕よくある間違い
のグラフを「中和点までは増えて、そのあと一定」と書いてしまう。 のグラフを「中和点で0になる」と書いてしまう。
は中和点に関係なく、最後まで同じ割合で増え続ける。 は最初から最後まで一定。反応しないイオンは中和点で形が変わらない。
もう1つ多いのが、単位のとりちがえです。 「体積を求めよ」なのに比の値だけを書いてしまう、 の をそのまま答えにしてしまう、という誤答が目立ちます。 比を立てたら、必ず最後に「何 cm³ か」まで計算しきりましょう。
やってみよう(練習問題)
やってみよう①(基本:比例で体積を出す)
うすい塩酸 12 cm³ をちょうど中和するのに、ある水酸化ナトリウム水溶液が 9 cm³ 必要でした。
- 同じ塩酸 20 cm³ をちょうど中和するには、この水酸化ナトリウム水溶液が何 cm³ 必要ですか。
- 逆に、この水酸化ナトリウム水溶液 15 cm³ をちょうど中和するには、同じ塩酸が何 cm³ 必要ですか。
答えと解説を見る
比は (塩酸 : 水酸化ナトリウム水溶液)。
- より 15 cm³。
- より 20 cm³。
同じ比を、向きを変えて使うだけです。約分して にしてから計算すると速くなります。
やってみよう②(標準:グラフを読む)
うすい塩酸 20 cm³ に水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ、16 cm³ 加えたときにBTB液が緑色になりました。
- 加えた体積を横じく、イオンの数をたてじくにしたとき、原点から右上がりの直線が最後まで続くグラフになるのはどのイオンですか。
- 8 cm³ 加えた時点で、水溶液は何性ですか。
- 24 cm³ 加えた時点で、数が0になっているイオンはどれですか。
答えと解説を見る
- (ナトリウムイオン)。加える液に乗って入ってくるだけなので、中和点に関係なく増え続けます。
- 酸性。中和点の16 cm³ より少ないので、 がまだ残っています(BTB液は黄色)。
- (水素イオン)。16 cm³ で使い切られ、そのあとは0のままです。
やってみよう③(応用:混ぜたあとを考える)
うすい塩酸 10 cm³ は、ある水酸化ナトリウム水溶液 8 cm³ でちょうど中和できます。 この塩酸 10 cm³ に、同じ水酸化ナトリウム水溶液を 4 cm³ だけ加えました。
- いまの水溶液は何性ですか。BTB液を入れると何色になりますか。
- ちょうど中性にするには、水酸化ナトリウム水溶液をあと何 cm³ 加えればよいですか。
- 中性にした水溶液を蒸発皿にとって加熱すると、あとに何が残りますか。物質名で答えなさい。
答えと解説を見る
- 酸性・黄色。ちょうど中和するのに必要な 8 cm³ の半分しか加えていないので、 が半分残っています。
- より 4 cm³。
- 塩化ナトリウム。 と が残っていて、水を蒸発させると白い結晶として出てきます。
家おうちの方へ
この単元でお子さんがつまずくとき、原因は理科ではなく比の計算にあることがほとんどです。 「」の形にできない、立てられても解けない、という場合は、小6の比に一度戻るのがいちばんの近道になります。 グラフのほうは、4本を丸暗記させないのがコツです。 「反応する2人組(・)は中和点で折れ曲がる/反応しない2人(・)は折れ曲がらない」という1本の理屈でまとめて説明できます。 用語や中和のしくみそのものがあやしいときは、酸・アルカリと中和とはに戻ってから、この計算ページに進んでください。
比で体積を求める・4本のグラフを選び分ける——この2つができれば、中和の問題はほぼ取り切れます。 次は電池と電気分解で、イオンが電気を運ぶ場面を見にいきましょう。
📌 1分まとめ(声に出して読もう)
- 「ちょうど中和する」=H⁺の数とOH⁻の数が等しいとき。1対1で結びついて水になるから。
- 濃さが同じなら 体積の比 = イオンの数の比。だから体積は比例で求まる。
- グラフ4本の形:H⁺は減って0/Cl⁻はずっと一定/Na⁺は増え続ける直線/OH⁻は中和点のあとから増える。
- 中和は発熱反応。温度は中和点でいちばん高くなる。
- できる塩は2タイプ。塩化ナトリウムは水にとける、硫酸バリウムは白い沈殿で電流が流れなくなる。
よくある質問
中和の計算はどうやって解きますか?
酸の水素イオンH⁺とアルカリの水酸化物イオンOH⁻は1対1で結びついて水になるので、濃さが同じ水溶液どうしなら「体積の比=イオンの数の比」になります。たとえば塩酸10cm³に水酸化ナトリウム水溶液8cm³でちょうど中和するなら、比は10対8=5対4。塩酸15cm³なら15×4÷5=12cm³と、比例の計算で求められます。
中和のグラフで、塩化物イオン Cl⁻ の数が変わらないのはなぜですか?
Cl⁻は中和の反応に関わらないからです。中和で結びつくのはH⁺とOH⁻だけで、Cl⁻は水溶液の中にそのまま残り続けます。加えているのは水酸化ナトリウム水溶液なのでCl⁻が増えることもありません。だからグラフは最初から最後まで高さが変わらない、横まっすぐな直線になります。
中和点を過ぎて水酸化ナトリウム水溶液を加え続けると、どうなりますか?
中和点でH⁺は0になっているので、そのあとに加えたOH⁻は結びつく相手がおらず、水溶液の中にたまっていきます。そのため液はアルカリ性になり、BTB液は緑から青に変わります。Na⁺は中和点の前後を通してずっと同じ割合で増え続け、Cl⁻は変わりません。
硫酸と水酸化バリウムを中和すると、なぜ電流が流れなくなるのですか?
できる塩の硫酸バリウムが水にとけないからです。塩酸と水酸化ナトリウムの中和では塩化ナトリウムが水にとけたままなのでイオンが残りますが、硫酸バリウムは白い沈殿になって液から出ていきます。ちょうど中和した点では水溶液中のイオンがほとんどなくなるため、電流がほとんど流れなくなります。
この単元でつまずいたとき、家庭でできること
- 酸・アルカリと中和とは(中3理科)に戻るつまずきの原因は、たいてい1つ前の単元にあります。まずそこを確かめてください。
- 説明役を、外部にまかせる教える側が説明しきれないときは、無料体験のある外部のサービスで様子を見る方法もあります。