中学理科中学2年生地学
気象災害(台風・大雨)|線状降水帯と高潮のしくみ【中2理科】
気象災害とは、台風や大雨など天気が原因で起こる被害のことです。中2理科の自然の恵みと気象災害を図でやさしく。台風が発達するしくみと進行方向の右側で風が強い理由、線状降水帯で雨が降り続くわけ、高潮と津波のちがい、警戒レベル5段階の意味、水資源という恵みまで、図と表で整理できます。
台風は、あたたかい海(およそ ℃以上)から大量の水蒸気を受け取り、水蒸気が水てきに変わるときに出す熱でさらに上昇気流が強まって発達します。中心には下降気流の台風の目ができ、風は反時計回りにふきこみます。進行方向の右側は、回転の風と進む速さが同じ向きに重なるため風が強くなります。大雨が長引くのは、同じ場所で積乱雲が次々に発生して列になる線状降水帯ができるからです。
◎このページのゴール
台風が発達するしくみと構造を説明でき、大雨・高潮・土砂災害が起こる理由を図で説明できるようになる。高潮と津波のちがいを区別し、警戒レベルやハザードマップを使って自分の行動を決められるようになる。
日本で毎年いちばん多く起こる災害は、地震でも噴火でもなく、天気による災害です。
台風、大雨、洪水、土砂災害、高潮、大雪——これらをまとめて気象災害といいます。
でも、ここで新しく覚えることはほとんどありません。
湿度と露点・前線と積乱雲・気団と季節風——すでに学んだしくみが、そのまま災害の説明になります。
どこでつまずいた?
あてはまるものをタップ。そこから読むと近道です。
台風は「あたたかい海」を燃料にして育つ
台風は、南のあたたかい海の上で発生した熱帯低気圧が発達したものです。
最大風速がおよそ 17 m/s 以上になったものを台風と呼びます。
暖気と寒気の境目でできるわけではないので、前線をともないません(前線のできる低気圧とはここがちがいます)。
では、なぜあれほど大きく発達するのでしょうか。
ポイントは ② です。
水蒸気が水てきに変わるとき、まわりに熱を出します。
その熱で空気がさらにあたためられ、上昇気流が強まり、また湿った空気がふきこむ——このくり返しで台風は発達します。
つまり台風の燃料は、あたたかい海の水蒸気です。
じゃあ台風って、日本に来ると弱くなることが多いのはどうして?
燃料がなくなるからだよ。
陸に上陸すると、海からの水蒸気の補給が止まる。おまけに地面とこすれて力もうばわれる。
北の海に進んだときも同じで、海水温が低いと水蒸気が足りなくなって勢力が落ちる。
逆にいえば、海水温が高い年は、日本の近くまで強いまま来るということでもあるんだ。
✓理解チェック1
進行方向の右側で風が強くなる理由
「台風の右側は危険」とよくいわれます。
これは経験則ではなく、速さのたし算とひき算で説明できます。
台風の風は、中心に向かって反時計回りにふきこんでいます。
台風が北へ進んでいるとき、
- 右側では、回転の風の向きと進む向きが同じ→ 速さが足し合わさる
- 左側では、向きが逆→ 速さが打ち消し合う
だから同じ台風でも、通り道のどちら側にいるかで風の強さがまるでちがうのです。
風の強さは天気図でも読めます。等圧線の間隔がせまいほど風が強い——このルールは天気図の読み方でそのまま使えます。
台風の天気図では、等圧線が中心にぎゅっと集まった同心円状になります。
✓風速の数字を身近な速さに直す
台風の基準になる 17 m/s は、時速に直すと 約61km。
車が街なかを走るくらいの速さの風が、家のまわりでずっとふき続けている——そう考えると、数字の重さが変わります。
秒速と時速の直し方は速さの単位換算(小5算数)と同じです。
✓理解チェック2
線状降水帯——雨が止まないしくみ
積乱雲は、強い雨を降らせる雲です。
でも、積乱雲1つの寿命は30分〜1時間ほどしかありません。
それなのに、なぜ何時間も強い雨が降り続くことがあるのでしょうか。
答えは、雲が入れかわり続けているからです。
湿った空気が同じ方向から流れこみ続けると、風上側で新しい積乱雲が次々に生まれます。
古い雲は上空の風に流されていくので、雲が一列に並んだ帯ができます。
これが線状降水帯です。
雲1つ1つは短命でも、帯の下にいる人にとっては「強い雨が何時間も止まない」ことになります。
✓「1時間に50mmの雨」はどれくらいの水か
降水量の mm は、たまった水の深さです。
m² の地面に mm = cm の水がたまるということなので、
1 m² あたり 50 L(50 kg)。
これが 1 km²(=100万 m²)に降ると、5万トンの水になります。
「1時間に50mm」がなぜ災害級なのかは、この単位量あたりの計算でつかめます(単位量あたりの大きさ(小5算数))。
大雨がもたらす災害は、水がどこへ行くかで分かれます。
| 災害 | 何が起きるか | とくに危ないところ |
|---|---|---|
| 洪水 | 川の水があふれる | 川ぞい・低い土地 |
| 内水はんらん | 下水があふれ、 道路や地下が水につかる | 都市部・地下街 アンダーパス |
| がけくずれ | 斜面が急にくずれる | 急な斜面のふもと |
| 土石流 | 土砂と水が 一気に流れ下る | 谷の出口・ 過去に噴火した山のふもと |
| 地すべり | 斜面がゆっくり動く | 前ぶれ(ひび割れ)あり |
上流で降った雨は、時間をおいて下流に届きます。
自分のいる場所で雨がやんでいても、川の水が増えることがあるのはこのためです。
✓理解チェック3
高潮——海面そのものが持ち上がる
台風が近づくと、海面が異常に高くなることがあります。
これが高潮です。原因は2つあります。
① 吸い上げ……気圧が低いほど、海面を押す力が弱まって海面が持ち上がります。気圧が 1 hPa 下がると、海面はおよそ 1 cm 上がります。
② ふき寄せ……強い風が海水を岸のほうへ押しつけます。とくに、風がまっすぐ吹きこむ形の湾では海水がにげ場をなくし、高くなります。
ここで、地震災害で学ぶ津波との区別が大切です。
名前も見た目も似ていますが、原因がまったくちがいます。
| 高潮 | 津波 | |
|---|---|---|
| 原因 | 台風・低気圧 (気象) | 海底の地震 (地震) |
| 何が起こる | 気圧の低下と 風のふき寄せ | 海底が上下にずれ、 海水全体が動く |
| 予測 | 台風の進路から 前もって予測できる | 地震の発生後に 急いで警報を出す |
| 来る時間 | 数時間かけて じわじわ上がる | 数分〜数十分で 押し寄せる |
じゃあ、高潮のほうが予測できるぶん安心なの?
「前もってわかる」のは大きな強みだね。でも安心とはちがうんだ。
高潮は、海面そのものが数時間にわたって高いままになる。だから堤防をこえたら、水はずっと入り続ける。
しかも台風のときは、大雨で川も増水している。海から入る水と、山から下りてくる水がぶつかって、水がどこにも行けなくなるんだ。
予測できるということは、逃げる時間があるということ。だから高潮は「早めに動く」がそのまま答えになる災害なんだよ。
警戒レベルと、気象がくれる恵み
気象災害は、前もって情報が出るという点で地震とちがいます。
その情報は、5段階の警戒レベルに整理されています。
| レベル | 出される情報 | とるべき行動 |
|---|---|---|
| 1 | 早期注意情報 | 心がまえを高める |
| 2 | 大雨・洪水注意報 | ハザードマップで 避難先を確認する |
| 3 | 高齢者等避難 | 高齢者・体の不自由な人は避難 |
| 4 | 避難指示 | 全員が危険な場所から避難 |
| 5 | 緊急安全確保 | すでに災害発生。 命を守る最善の行動を |
避難するのはレベル4までです。
レベル5は「もう安全に逃げられないかもしれない」という段階なので、レベル5を待ってはいけません。
→やり方
- 警戒レベル2で、ハザードマップを開く。 自分の家が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかを確認する。
- レベル3で、時間のかかる人が動く。 高齢者や小さな子どもがいる家庭は、この段階で避難を始める。
- レベル4で、全員避難。 夜や大雨のさなかの移動が危険なときは、建物の2階以上・斜面と反対側の部屋へ移る(垂直避難)。
いっぽうで、同じ気象が恵みももたらしています。
- 水資源……日本の豊かな雨と雪が、飲み水・農業用水・工業用水・水力発電を支えている。
- 雪どけ水……冬に積もった雪が、春から夏にかけて少しずつとけ、田畑をうるおす天然のダムになる。
- 四季……気団の入れかわりが四季をつくり、農作物の種類の多さや文化を生んでいる。
- 季節風……夏の南東の風と冬の北西の風が、豊かな雨と雪をもたらしている。
雨が多いことは、災害の原因でもあり、日本が水に恵まれている理由でもあります。
✓理解チェック4
よくある間違い
✕よくある間違い
高潮と津波を同じものとして覚える
高潮は気象(気圧と風)、津波は地震(海底の変動)が原因
ほかにも、まぎらわしい間違いが3つあります。
① 台風が前線をともなうと思う。 台風は暖気と寒気の境目ではなく、あたたかい空気だけでできています。だから前線はありません。天気図では同心円状の等圧線になります(前線の低気圧との大きなちがい)。
② 台風の目に入ったら終わりだと思う。 目の中は一時的に風がやんで晴れることもありますが、そのあと反対向きの猛烈な風がふき返します。目が通過している間が、次に備える時間です。
③ 「自分のところは雨がやんだから安全」と考える。 川の水は、上流で降った雨が時間をおいて流れてきます。雨がやんだあとに増水することはめずらしくありません。
やってみよう(練習問題)
やってみよう①(基本:台風のしくみ)
次の問いに答えましょう。
- 台風の燃料になっているものは何ですか。
- 台風の中心にできる、下降気流で雲がない部分を何といいますか。
- 台風が前線をともなわないのはなぜですか。
答えと解説を見る
- あたたかい海から供給される水蒸気。水てきに変わるときに出す熱で、上昇気流がさらに強まります。
- 台風の目。ここだけは下降気流になり、雲が消えて風も一時的に弱まります。
- 前線は暖気と寒気の境目にできるものですが、台風はあたたかい空気だけでできているため、境目そのものが存在しないからです。
やってみよう②(標準:計算してみる)
次の問いに答えましょう。
- 最大風速 17 m/s は、時速何 km ですか。
- 1時間に 40 mm の雨が、1 m² の地面に降りました。何 L の水がたまりますか。
- 気圧が 970 hPa まで下がりました。ふだんの気圧を 1010 hPa とすると、吸い上げによって海面はおよそ何 cm 上がりますか。
答えと解説を見る
-
より 61200 m/時 = 約 61 km/時。
-
40 mm = 0.04 m なので、 m³。1 m³ = 1000 L なので 40 L(=40 kg)。
-
1 hPa で約 1 cm 上がるので、 より 約 40 cm。これに風のふき寄せが加わります。
やってみよう③(応用:記述で説明する)
次の問いに、文章で答えましょう。
- 台風の進行方向の右側で風が強くなる理由を説明しなさい。
- 線状降水帯で雨が長時間続く理由を、積乱雲の寿命にふれて説明しなさい。
- 高潮と津波のちがいを、原因に着目して説明しなさい。
答えと解説を見る
-
(例)「台風の風は反時計回りにふきこんでいるため、進行方向の右側では回転の風の向きと台風が進む向きが同じになり、2つの速さが足し合わされて風が強くなるから。」
-
(例)「積乱雲1つの寿命は1時間ほどしかないが、しめった空気が同じ方向から流れこみ続けることで、風上側に新しい積乱雲が次々に発生し、古い雲は流されて列になるため、その帯の下では強い雨が降り続くから。」
-
(例)「高潮は台風や低気圧による気圧の低下と、強い風のふき寄せで海面が上昇する気象が原因の現象であるのに対し、津波は海底で地震が起こり、海底が上下にずれて海水全体が動くことで発生する地震が原因の現象である。」
家おうちの方へ
この単元は、新しい知識がほとんどありません。すでに学んだ湿度・積乱雲・低気圧・気団が、そのまま災害の説明になります。だからこそ「覚える」のではなく「説明できるか」で確認してあげてください。
とくに定着させたいのは3つです。①台風の燃料はあたたかい海の水蒸気(だから上陸すると弱まる)、②線状降水帯は雲が入れかわり続けている(1つの雲が居すわっているのではない)、③高潮と津波は原因がちがう(気象か地震か)。この3つが言えれば、記述問題はほぼ書けます。
計算の力もそのまま使えます。風速 m/s を時速に直すのは速さの単位換算、降水量 mm を水の量に直すのは単位量あたりの大きさです。「1時間に50mmって、どのくらいの水だと思う?」と聞いてみると、数字が急に立体的になります。
仕上げは、警戒レベル4で全員避難という一点です。レベル5を待たない、という理解だけは、テストのためでなく身につけさせてあげてください。
台風は、あたたかい海の水蒸気を燃料に育つ。
線状降水帯は、積乱雲が次々に生まれ変わりながら居すわる。
高潮は気象が原因で、津波は地震が原因。
——同じ空のしくみが、災害も、日本の豊かな水も生んでいます。しくみがわかれば、天気予報は自分の行動を決めるための道具になります。
📌 1分まとめ(声に出して読もう)
- 台風=熱帯低気圧が発達し、最大風速がおよそ m/s 以上になったもの。前線をともなわない。
- あたたかい海の水蒸気が燃料。水てきに変わるときに出す熱で、上昇気流がさらに強まる。
- 中心は下降気流で晴れる=台風の目。等圧線は同心円状で、間隔がせまいほど風が強い。
- 進行方向の右側は、回転の風+進む速さで風が強い。左側は打ち消し合って弱い。
- 線状降水帯=同じ場所で積乱雲が次々に発生し、列になって何時間も降り続く。
- 高潮は気圧の低下と風のふき寄せで海面が上がる現象。津波(海底の変動)とは原因がちがう。
よくある質問
台風はどのように発達するのですか?
台風は、およそ26℃以上のあたたかい海の上で発生した熱帯低気圧が発達したものです。海面から蒸発した大量の水蒸気が上昇し、上空で冷えて水てきに変わるとき、まわりに熱を出します。この熱で空気がさらにあたためられて上昇気流が強まり、そこへまた湿った空気がふきこむ、というくり返しで発達します。そのため、あたたかい海の上では発達し、陸に上陸したり冷たい海域に進んだりすると、水蒸気の補給が絶たれて勢力が弱まります。
台風は進行方向の右側で風が強いのはなぜですか?
台風の風は中心に向かって反時計回りにふきこんでいます。進行方向の右側では、この回転の風の向きと、台風自身が進む向きがほぼ同じになるため、2つの速さが足し合わさって風が強くなります。反対に左側では回転の風と進む向きが逆になるため、打ち消し合って風が弱くなります。右側は危険半円、左側は可航半円と呼ばれます。
線状降水帯とは何ですか。なぜ雨が長時間続くのですか?
線状降水帯とは、発達した積乱雲が次々に発生して列のように連なり、同じ場所に数時間にわたって強い雨を降らせる雨域のことです。積乱雲1つの寿命は30分から1時間ほどしかありませんが、湿った空気が同じ方向から流れこみ続けると、風上側で新しい積乱雲が次々にできます。古い雲は風で流されていくため、全体では帯のような形になり、その真下では雨が止まないまま何時間も降り続くことになります。
高潮と津波は何がちがうのですか?
原因がまったくちがいます。高潮は台風や発達した低気圧が近づいたときに、気圧が低いために海面が吸い上げられ、さらに強い風が海水を岸へふき寄せることで海面が上昇する気象現象です。一方、津波は海底で地震が起こり、海底が上下にずれて海水全体が動くことで発生します。高潮は気象が原因、津波は地震が原因、と区別してください。なお高潮は満潮の時刻と重なると、被害がとくに大きくなります。
この単元でつまずいたとき、家庭でできること
- 日本の天気(中2理科)に戻るつまずきの原因は、たいてい1つ前の単元にあります。まずそこを確かめてください。
- 説明役を、外部にまかせる教える側が説明しきれないときは、無料体験のある外部のサービスで様子を見る方法もあります。